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Column ・ 2026.06.03

第3回 OGN用の地上アンテナはどれがいい?

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江副 浩 / ezoe.net ・ 2026年6月

前回までで、FLARMの仕組みと、滑空場に地上受信局(OGN局)を置くと何がうれしいのか、というお話をしてきました。離着陸機をフライトサービス(FS)席からリアルタイムに見られますし、OGN経由でご家族や仲間が飛行を追うこともできます。捜索救難の初動にも効きます。

そこで必ず出てくるのが「結局、地上のアンテナはどれを選べばよいのか」というご質問です。今回はこれを正面から扱います。先に答えの骨格を申し上げますと、良い地上アンテナの条件は次の4つに集約されます。

良い地上アンテナの4条件

  • ① オムニ(無指向性)であること。屋根など高い場所に1本立てて、全方位を広くカバーしたいためです。
  • ② 水平より「上」もカバーできること。上空の機体を拾いますので、地平線方向だけでなく打ち上げ角に余裕がほしいところです。
  • ③ 中心周波数 922.4MHz にきちんと同調していること。日本仕様FLARMはここを使います。SWRがこの周波数で落ちている必要があります。
  • ④ 真上(直上)は、実はそれほど気にしなくて構いません。オムニアンテナは構造上「真上が見えません」。しかし真上の機体は高度の分しか離れておらず、見通しも良いため、不感帯(コーン・オブ・サイレンス)があっても実用上は問題になりにくいのです。
ポイント④が直感に反するところです。垂直系のオムニは真上に「穴」ができますが、真上の機体は最短距離(=その機体の高度分)におり、電波も強いため、穴があっても拾えます。むしろ大切なのは、遠く・低く飛ぶ機体を捕まえる水平〜やや上方向の利得です。

カバレージのイメージ

真上=不感帯 (コーン・オブ・サイレンス) 屋根の上のオムニ 🛩️ 遠く・低い機体 → 距離が長い。水平の利得が効く 🛩️ 真上付近の機体 → 距離が近い(高度分)&見通し良。穴があってもOK 打ち上げ角
地上オムニアンテナのカバレージ断面。狙いは「水平〜やや上方向」を広く取ることです。真上の不感帯は、距離が近く見通しも良いため、実用上は許容できます。

候補アンテナ

条件を踏まえて、現実的な候補を3つ挙げてみます。

候補 1 ・ お試し向き

OGN用SDRに付属する標準アンテナ

RTL-SDRなどに付いてくる小型ホイップです。とりあえずの試験には十分使えます。ただし周波数に合ったエレメント長が重要で、付属のままでは長すぎ/短すぎのことが多いです。922.4MHzに合わせて切る(あるいは伸ばす)必要があります。長さの計算は次章で扱います。

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吸盤マウント付きテレスコピックアンテナ2本(標準SDR付属アンテナの例)
RTL-SDR付属のテレスコピックアンテナ。吸盤マウントで窓ぎわに仮設できる。エレメントを伸縮させて922.4MHzに合わせ込む。
候補 2 ・ 安価な汎用品

LoRa用アンテナ(920MHz帯)

920MHz帯のIoT/LoRa向けアンテナも流用できます。安価で入手しやすく、利得の高いタイプもあります。ただし同調周波数や利得の素性が製品ごとにまちまちですので、できればSWRを確認したいところです。

参考リンク:https://amzn.asia/d/0hgQzhH4

824-960MHz・12dBiの通信アンテナ(LoRa/920MHz帯で流用できるオムニ)
824〜960MHzをカバーする高利得(12dBi)のオムニアンテナ。N-J・Uクランプ付きで屋外設置向き。920MHz帯(FLARM)でも流用できる。
候補 3 ・ 著者の選択 ★

アンテナテクノロジー VA905A-920(915〜930MHz・N-J)

著者の選択はこれです。920MHz帯サブギガヘルツ無線用に設計された固定局用の無指向性コリニア型アンテナで、周波数範囲は915〜930MHz。FLARMの922.4MHzがちょうど帯域の中央付近に入ります。利得は公称5dBiと、オムニアンテナとしては十分な数字です。全長546mmの白いレドームにエレメントが収まる、すっきりした屋外常設向きの姿です。

特筆すべきはDCグランド構造になっている点です。誘導雷などに起因する機器の不具合防止に効果的で、後述するサージプロテクタと組み合わせれば、屋根上の常設局として心強い構成になります(直雷には効果がありません。直雷対策は避雷針で)。取付金具はステンレス製で海岸地方でも安心、耐風速50m/s、Vボルトで垂直・水平どちらのマストにも取り付けられるなど、まさに「据え付けて何年も使う」地上局にふさわしい作りです。

マスト(φ32〜60.5mm) レドーム内に コリニアエレメント Vボルト金具 (ステンレス) 546mm 5D-2V 約30cm / N-J VA905A-920 の外観と取り付け
全長546mmのレドームにコリニアエレメントが収まり、付属のVボルト金具でマスト(φ32〜60.5mm)へ。垂直マストにも水平マストにも取り付けられるセミユニバーサル方式です。
項目仕様
型名 / 形式VA905A-920 / 無指向性コリニア型アンテナ(固定局用)
水平面内指向性無指向性(オムニ)
利得公称 5dBi
半値幅E面 約35度
SWR2.0 以下
インピーダンス公称 50Ω
コネクタN-J型(5D-2V 同軸ケーブル 約30cm付)
外形寸法 / 質量約φ27.2×546mm / 約0.6kg(取付金具含む)
取付けVボルト金具(φ32〜60.5mmマスト・垂直/水平可)、耐風速50m/s
そのほかDCグランド構造(誘導雷対策)・ステンレス取付金具
メーカーアンテナテクノロジー株式会社(埼玉県川越市) www.ant-inc.co.jp

標準アンテナの「正しい長さ」を計算する

候補1の標準ホイップを使うのであれば、エレメント長を922.4MHzに合わせるのが先決です。1/4λモノポールの長さは、次のように求められます。

λ = 300 ÷ 922.4 ≒ 32.5 cm  →  λ/4 ≒ 8.1 cm 自由空間の 1/4波長は約8.1cmです。実際のロッドは端部効果(短縮率 約0.95)で少し短くなり、共振長は約7.7〜8.1cmになります。
つまり狙いは約8cmです。よく言われる「8.6cm」はほんの少し長く、SWRの底が922.4MHzより下にずれやすくなります。
8cm前後にカットして、可能であればSWR(または受信感度)を見ながら数mm単位で微調整するのがベストです。
補足RTL-SDRのダイポールキットであれば、左右の各エレメントをそれぞれ約8cmにします。マグネット基台のモノポールであれば、基台の金属面がグランドプレーンになりますので、1本を約8cmにします。いずれも垂直に立てて偏波を合わせてください。

プリアンプは必要? ― 慎重に

感度向上の定番として、プリアンプ(LNA)がよく挙げられます。確かに低雑音のLNAをアンテナ直下に置けば、理屈の上では効きます。ただしプリアンプは欲しい信号だけでなく、ノイズも一緒に持ち上げてしまいます。とくに920MHz帯はLoRaやIoT機器でにぎやかな混雑バンドですので、広帯域の素のLNAでは、近くの強い電波でかえって受信機を飽和させ、感度がかえって落ちることすらあります。

結論としては、まずは良いアンテナ・高い設置・短く良質な同軸で素直に組むのが先です。プリアンプは、それでも足りないときの「次の一手」と考えたいところです。導入するのであれば、帯域外を削るSAWフィルタ内蔵タイプを、アンテナ直下に置きます。やみくもに足すものではありません。

⚡ サージプロテクタを忘れずに(最重要)

プリアンプ以上に、声を大にして申し上げたいのがこれです。感度の良いアンテナを高い場所に上げるということは、それだけ雷を呼び込みやすくなるということでもあります。屋根の上に立てた立派なアンテナは、誘導雷の一撃でSDRもRaspberry Piも一発で壊してしまいます。実際、これで機材を飛ばしてしまった話は珍しくありません。

必須同軸ラインに同軸サージプロテクタ(ガス入り放電管タイプ等)を挿入し、確実に接地します。アンテナへの投資より先に、こちらを予算に入れておきましょう。高感度アンテナ=避雷針、くらいの気持ちで臨んでください。
アンテナ (屋根上) ⚡ サージ プロテクタ 確実に接地 SDR受信機 + Raspberry Pi FS / OGN
サージプロテクタは「アンテナと受信機の間」に挿入し、接地します。これがあるかないかで、機材の寿命が変わります。

みんなで実験しよう

FLARMの地上受信は、これから各地の滑空場で皆さんが試していく段階です。地形も設置環境も場所ごとに違いますので、「うちはこのアンテナで遠くまで届いた」「この設置で安定した」という生の知見がいちばん価値があります。

「このアンテナ、感度がいいよ」というものを見つけられたら、ぜひ著者までお知らせください。集まった情報は、また次のコラムで共有していきたいと思います。空の安全は、こうして少しずつ、皆で積み上げていくものだと思っています。