Column ・ 2026.07.06
第6回 日本でFLARMは何を選べる? — サードパーティ機と“技適の壁”
江副 浩 / ezoe.net ・ 2026年7月
前回「Open Glider Network(OGN)について」をお送りしたところ、「うちのフライトコンピュータ(LXNAVなど)にもPowerFLARMが入っているが、それで日本でFLARMは使えるのか?」というご質問をいただきました。とても良い問いです。今回は、私自身がFLARM社の技術担当者とやり取りして確認した内容をもとに、日本でFLARMを使うとき、サードパーティ製品はどういう位置づけになるのかを整理します。結論から言えば、「技術的に通じる」ことと「合法に使える」ことは、まったくの別物です。
ファーム 7.44 で、全FLARMが“日本語”を話せるようになった
2026年6月、FLARM社は新しいファームウェア バージョン 7.44 をリリースしました。ここでの最大の変更点は、FLARM社の技術担当 Thomas 氏の言葉を借りれば、次の一文に尽きます。
(=7.44以降、すべてのFLARM機器が同じ日本専用リージョンに対応し、922.4MHzで相互に通信できるようになる。)
これまで日本仕様(922.4MHz/ARIB STD-T108)を知っていたのは、事実上 PowerFLARM Flex だけでした。それが7.44で、Classic FLARM(約20年前の初代機)を除くすべてのPowerFLARM/ATOMベース機器に広がったのです。対象には、FLARM社純正機だけでなく、各社が組み込んで販売しているOEM機(LXNAV、Air Avionics、Hensoldt、F.U.N.K.E. など)も含まれます。
「見える」ことの意味 ― 世界一周機も、Flex乗りには映る
この「相互運用」は、地味に見えて大きな意味を持ちます。たとえば、世界一周を目指して日本に立ち寄る小型機が、7.44以降のFLARMを積んでいたとしましょう。7.44のFLARMはGPSで自分の現在地を把握し、日本の空域に入った時点で無線リージョンを自動的に日本仕様へ切り替えます。パイロットが何か操作する必要はありません。切り替わった機体はFlexと同じ922.4MHzで送受信を始めるので、PowerFLARM Flexを積んだ私たちのグライダーからは、その機体がちゃんと見えるようになります。
逆に、日本のグライダーがFlexで出した電波も、7.44を積んだ相手機に届きます。つまりFLARM本来の目的である「衝突防止」は、メーカーの垣根を越えて機能するということです。これはとても心強い話です。
ところが ― “技適”がなければ、電波を出した瞬間に違法
ここからが、いちばん大切な話です。「技術的に通じる」ことと、「日本で合法に使える」ことは、まったく別の問題です。
日本で電波を出す無線機は、原則として 技術基準適合証明(通称・技適) を受けている必要があります。FLARMは受信するだけでなく自ら電波を送信する装置ですから、当然この対象です。そして重要なのは――
つまり、いくら手元のLXNAVやAir Avionicsのファームを7.44に上げて「技術的にはFlexと通じる状態」にできたとしても、その機種が日本の技適を取得していない限り、日本国内でFLARMの電波を出すことは違法なのです。ここは絶対に混同してはいけないところです。
現時点で“合法解”は、PowerFLARM Flex ただ一つ
では、いま日本で合法的にFLARMを使えるのは何か。答えは明快で、日本の技適を取得済みの PowerFLARM Flex だけです。他のどのサードパーティ機よりも先に、Flexだけがこの関門をくぐっています。日本でFLARMを始めるなら、現状はこれ一択、と言い切ってよい状況です。
サードパーティ各機の“現在地”
とはいえ、多くの方が使っているフライトコンピュータには、各社のOEM版FLARMが組み込まれています。それぞれ現時点でどういう状況なのか、私が確認できた範囲で表にまとめました。ポイントは「電波を出す送信機か/表示だけの受け手か」と、「7.44(日本リージョン)に届いているか」、そして「日本の技適があるか」の3点です。
| メーカー / 機種 | 種別 | 日本リージョン(7.44) | 日本の技適 |
|---|---|---|---|
| FLARM PowerFLARM Flex | 送信機 | 対応 | 取得済み合法 |
| FLARM PowerFLARM Core / Portable / Fusion | 送信機 | 7.44で対応 | なし要確認 |
| LXNAV LX80xxPF / LX90xxPF(2018年〜), FlarmBat, PowerMouse系 | 送信機(PowerFLARM内蔵) | 7.44配布済み(2026-06-10) | なし要確認 |
| Air Avionics AIR Traffic AT-1 | 送信機(PowerFLARM系) | 現行7.40系 → 7.44要更新 | なし要確認 |
| Hensoldt RF1 スマートアンテナ + PowerFLARMモジュール | 送信機(PowerFLARM系) | 現行7.43 → 7.44要更新 | なし要確認 |
| F.U.N.K.E. TM350 | 送受信内蔵(FLARMビーコン標準装備) | ATOM/PowerFLARM系として対象 | なし要確認 |
| Aerobits TR-1F ほか | 送信機系 | 対象 | なし要確認 |
| Naviter Oudie/Garmin/Dynon 等の表示器 | 表示のみ(自ら電波を出さない) | ―(送信しない) | ―(送信機ではない) |
大事なお願い ― “使う前に、メーカーへ技適取得を”
ここで、サードパーティ機をお使いの皆さんに、ぜひお願いしたいことがあります。技適の取得は、パイロット個人ではなく、メーカーが行うものです。だからこそ、私たちユーザーにできる最も有効な一手は――
逆に言えば、技適が取れるまでは、その機種で日本国内の周波数の電波を出してはいけません。海外で7.44に上げた機体をそのまま日本で使うのも同じです。「衝突事故をなくす」というFLARM本来の目的は何より大切ですが、それは合法な手段の上で実現してこそです。焦らず、まずはメーカーへの働きかけと、確実に合法な Flex の活用から進めましょう。
まとめ
- 7.44で、Classicを除くほぼ全FLARMが日本リージョン(922.4MHz)に対応し、メーカーの垣根を越えて衝突防止が機能するようになった。
- だが「技術的に通じる」=「合法に使える」ではない。電波を出すには日本の技適が必須で、無ければ使ったパイロット本人が電波法違反。
- 現時点で日本で合法にFLARMを送信できるのはPowerFLARM Flexだけ。
- サードパーティ機ユーザーは、メーカーに技適取得をリクエストするのが最善手。取得までは日本での送信は控える。
安全のための装備で法を犯しては本末転倒です。正しい順番――合法な手段の確保と、メーカーへの働きかけ――で、日本の空にFLARMの輪を広げていきましょう。
