合同会社タキカワ飛行機

Column ・ 2026.06.05

第5回 Open Glider Network(OGN)について

← コラム一覧へ

江副 浩 / ezoe.net ・ 2026年6月

前回「OGN用の地上アンテナはどれがいい?」という記事をお送りしたところ、思いがけず多くの反響をいただきました。なかでも一番多かったのが、「そもそもOGNって何ですか?」というご質問です。アンテナの話の前に、まずそこですよね。今回は、OGNとは何なのかを、できるだけかみ砕いてご説明します。

FLARMは衝突防止、OGNはその電波の“再利用”

まず大前提として、FLARMの利用目的は「衝突防止」に尽きます。お互いの位置を電波でやり取りし、接近したら警報を出す。それがFLARMという装置の本分です。

ところが、そのFLARMが空に向けて出している電波を、地上で受信し、その情報をインターネット上で統合・共有してしまおうという、非公式ながら有志のサービスがあります。それがOpen Glider Network(OGN)です。ひとことで言えば、グライダー版のFlightRadar24とお考えいただくと、いちばん近いと思います。

🛩️ FLARM搭載機 位置を電波で送信 地上受信局 世界中のボランティアがDIY設置 インターネット OGN 情報を統合・共有 🗺️ 📱 📡 公開サイト 各種アプリ FlightRadar24
OGNの全体像。機体のFLARM電波を地上局が受信し、インターネット経由でOGNに集約。そこから各種公開サイトやアプリ、そしてFlightRadar24へと配信される。
じつはOGNはFlightRadar24とも接続されています。地上受信局からOGNに送られた機体の情報は、FlightRadar24にも提供されます。ただし対象は、後述するOGNのデータベースに登録済みで、かつ非トラッキング設定(NOTRACK)になっていない機体に限られます。あなたのグライダーが、世界的なフライトトラッキングサイトに映る――そんなことも起こりうるわけです。

日本は、これまで“圏外”だった

これだけ便利なOGNですが、これまで日本はサポート対象外でした。理由はシンプルで、日本国内で合法的にFLARMの電波を送信できなかったからです。送信する機体がなければ、地上で受信するものもありません。OGNとしても、日本を対象に含める理由がなかったのです。

これが、この度大きく変わりました。FLARM FLEXが日本で合法的に電波を送信できるようになり(922.4MHz/ARIB STD-T108)、あわせてOGN側でも、日本用に新しく「リージョンコード7(Region Code 7)」が割り当てられました。これにより、日本も正式にOGNで利用できる地域になったのです。長らく圏外だった日本が、ようやく地図に乗りました。

Open Glider Network 公式サイト
https://www.glidernet.org/
OGNプロジェクトの本拠地。仕組みや目的、受信機ネットワークについての一次情報。

受信機は、世界中のボランティアの手で

OGNを支えているのは、世界中のボランティアです。地上受信局は中央の誰かが整備しているのではなく、各地の有志がDIY(自作)で設置しています。安価なSDR(ソフトウェア受信機)と小さなアンテナ、そしてRaspberry Piのような小型コンピュータがあれば、誰でも受信局の仲間入りができます。前回のアンテナの話も、まさにこの「自分で受信局を立てる」ためのものでした。

そして何より――この日本のOGNネットワークは、これから受信局を立ててくださる一人ひとりによって広がっていきます。「自分もやってみたい」と思われた方のために、日本向けの受信機の設置方法を、当サイトで詳しく公開しています。

▶ ボランティア受信局を立ててくださる方へ
日本向け OGN 受信機 セットアップガイド
日本仕様(922.4MHz/リージョンコード7)に合わせた、地上受信局の構築手順を、最初から最後までステップごとに解説しています。必要な機材・配線・設定まで、これ1ページで始められます。
セットアップガイドを見る → ezoe.net/glider/ogn-receiver-setup-japan.html
仲間募集受信局は1か所増えるごとに、日本の空の“見える範囲”が確実に広がります。お住まいの地域がまだOGNの空白地帯なら、あなたの1局が大きな一歩になります。ぜひ上のガイドから、最初の一台を立ててみてください。

集まった情報は、どこで見られる?

受信局が集めた情報は、いくつものサイトで公開されています。OGN公式のものから、有志による高機能なものまで、それぞれ個性があります。代表的なところをご紹介します。

live.glidernet.org 公式
https://live.glidernet.org/
OGN公式のライブマップ。いま空を飛んでいる機体を地図上でリアルタイムに確認できる、いちばん基本のサイト。
GliderTracker(glidertracker.de)
https://glidertracker.de/
有志による高機能トラッカー。航跡や高度の表示が見やすく、ソアリング解析にも向く人気サイト。
OGN Range(ognrange.onglide.com)
https://ognrange.onglide.com/
受信局ごとの“カバレージ(受信範囲)”を解析・可視化してくれるサイト。自分の受信局がどこまで届いているかの確認に。
ポイントOGNは各種APIも公開しています。そのため、これらの既存サイトを使うだけでなく、データを取り込んで独自のレース実況サイトやイベント用トラッキング画面を自作することも可能です。アイデア次第で、使い道はぐっと広がります。

FLARMが送っているのは“名前のないID”だけ

ここで一点、注意したいことがあります。FLARM本体が発信している電波には、「どの機体か」を直接示す情報は載っていません。具体的に送られているのは、識別用のID(番号)だけです。送られるIDは、次の2種類です。

送信されるID条件性質
FLARM ID FLARMだけを搭載している場合 FLARM機器に紐づく識別番号。これだけでは機体名はわからない。
ICAO 24ビットID FLARMに加えてトランスポンダ(モードS以上)を搭載している場合 航空機固有の24ビットアドレス。トランスポンダがあって初めて使われる。

つまり、FLARMだけを積んでいる機体はFLARM IDのみ、トランスポンダ(モードS以上)も積んでいればICAO 24ビットIDが使われる、ということです。いずれにせよ、電波そのものには「JA○○○○」のような登録番号は含まれていません。サイト上では、ただの番号として表示されることになります。

登録すれば、自分の機体が“名前”で映る

「番号のままだと味気ない」「自分の機体を登録番号で表示したい」という場合は、そのIDが自分の機体のものだと事前に登録しておきます。登録すると、先ほどのサイト群で、味気ない番号のかわりに機体の登録番号やコンテストナンバーで表示されるようになります。登録先は主に次の2か所です。

OGN Devices Database(DDB)
https://ddb.glidernet.org
OGNの機体データベース。IDと機体情報の紐づけに加え、トラッキング可否(NOTRACK等)もここで管理される。
FlarmNet
https://www.flarmnet.org
FLARM IDと機体・パイロット情報を結びつける登録データベース。各種表示サイトが参照する。

自分の機体を表示させたい方は、必要に応じてこちらに登録しておきましょう。

逆に「映りたくない」ときは

「自分の位置をこうしたサイトに表示されたくない」という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、FLARM FLEX側の設定で表示を止めることができます。大切なのは、どちらの機能を使っても、本来の衝突防止機能は通常どおり働くということです。安全機能を犠牲にせずに、プライバシーだけを守れます。

機能何を止める?衝突防止は?
NOTRACK機能 OGN等のトラッキング表示のみを非表示にする。地上サイトには出なくなる。 通常どおり作動。FLARMどうしは互いに認識し合い、警報も出る。
Stealth機能
(コンペモード)
FLARMどうしでも、水平2km・垂直300m以内に入るまでは詳細な情報を渡さない。離れた相手には表示されない。 通常どおり作動。接近時にはきちんと機能し、安全は保たれる。
使い分けNOTRACKは「地上のトラッキングサイトに映りたくない」とき。Stealth(コンペモード)は、競技で「遠くから手の内(位置や上昇の様子)を読まれたくない」とき。いずれも、いざ接近したときの衝突防止はしっかり働きますので、安全面はご安心ください。

ただし、NOTRACKには“落とし穴”があります

ここで、ぜひ知っておいていただきたい大切なことがあります。NOTRACKを設定すると、その機体の情報はどこにも記録されなくなります。公開地図に映らないだけでなく、OGNのサーバ内にも履歴が残りません。一見プライバシー的には安心ですが、これには見過ごせない代償があります。

それは、万が一遭難したときに、飛行情報を捜索に使えなくなるということです。記録が一切残っていないため、「最後にどこを飛んでいたか」を後からたどる手がかりがなくなってしまうのです。これは、安全のための装備としては本末転倒になりかねません。

おすすめそこで推奨したいのが、NOTRACKは使わず、DDB(ddb.glidernet.org)側で「オプトアウト」設定にする方法です。こうすると、公開地図には表示されませんが、OGNのサーバ内には記録が残ります。つまり、ふだんは他人に位置を見られずに済みつつ、いざ遭難したときには、サーバ内に残った最後の電波情報を捜索・救助に活用できるのです。「映りたくない」と「いざというときの備え」を、両立させられます。
設定公開地図への表示サーバ内の記録遭難時の捜索利用
NOTRACK 表示されない 残らない 使えない
DDBオプトアウト推奨 表示されない 残る 使える

最後に ― OGNは“便利な第三者”

あらためて申し上げます。FLARMは、あくまで衝突防止装置です。OGNは、そのFLARMが出している電波を、衝突防止とは別の目的で受信・共有しているにすぎません。FLARMが推奨も承認もしていない、非公式のシステムだという点は、はっきりさせておきたいところです。

とはいえ――利用する側にとっては、OGNはとても便利な存在です。離着陸機をフライトサービス席で見守る、ご家族が飛行を追う、捜索救難の初動に役立てる、独自の実況サイトを作る。FLARM本来の安全機能を一切損なうことなく、その「副産物」を上手に活かせるのがOGNです。非公式であることを理解したうえで、賢く付き合っていきたいですね。