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Column ・ 2026.08.04

第10回 FLARMが鳴ったら、どう動く? ― 6つの表示の読み方と、はじめの一手

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江副 浩 / ezoe.net ・ 2026年8月

FLARMは、あなたと衝突コースにある機体を見つけると、視覚と音で警告します。けれど、TCASのように「右に何フィート上がれ」といった回避の指示(RA=解決勧告)は出しません。どう避けるかを決めるのは、いつでもパイロット自身です(公式マニュアル 8.2)。

だからこそ、表示の意味を飛ぶ前に頭に入れておくことが大切です。鳴ってから「これは何色だっけ?」と考える余裕は、10秒前の世界にはありません。この記事では、Flexの表示を「色(=あと何秒)」「方向がわかる相手/わからない相手」の2つの軸で、6つの状態に分けて読み解きます。

実機デモ動画で見る(YouTube)PowerFLARM Flexが実際に鳴り、LEDとLCDの表示が変わっていく様子を動画で確認できます。

1|まず「色」=あと何秒か

Flexの警告は、衝突予測点までの時間で色が変わります。マニュアルによれば、FLARMの警告は3段階でエスカレートし、通常は衝突可能性のおよそ20秒前・15秒前・10秒前にトリガーされます(8.2.1)。飛行経路が離れていけば、レベルは下がるか解除されます。

情報20秒以上第1警告約20秒第2警告約15秒第3警告約10秒〜← 余裕あり(遠い・離れていく)衝突予測点 →音:無音/ゆっくり点滅音:連続ブザー・速い点滅
色は「深刻さ」ではなく「残り時間」。緑は情報、黄・橙は注意、赤は待ったなし。左へ行くほど余裕があります。
読み方緑=情報(まだ警報ではない)/黄・橙=注意(このままだと約20〜10秒)/赤=警報(10秒未満・待ったなし)。音も同じで、緑は静か、赤は連続ブザーと速い点滅になります。

2|「方向がわかる相手」と「わからない相手」

もう一つの軸が、相手の見え方です。ここがFlexの表示を理解するいちばんの勘どころ。同じ「近くにいる」でも、相手が何を積んでいるかで、見え方がまったく変わります。

FLARM / ADS-B自分の位置を放送 →方位・距離・高度差がわかるモードS / モードC問い合わせに応答するだけ概算の距離・高度のみ・方位なし
左:FLARM/ADS-B機は自分のGPS位置を放送するので、方位・距離・高度差までわかる。右:モードS/モードC機は問い合わせに応答するだけなので、おおよその距離と高度しかわからず、方位は出ない(8.2.3)。
  • 方向がわかる相手(FLARM/ADS-B):相手も自分の位置を電波で放送しているので、「何時の方向・どのくらい上か下か」まで具体的に表示されます。LEDリングは1個だけ、相手のいる時計方向に光ります。
  • 方向がわからない相手(モードS/モードC):相手はレーダーやTCASの問い合わせに応答するだけで、位置は放送していません。Flexは電波の強さと高度からおおよその距離と高度差だけを知ります――方位は出ません。LEDリングは方向を示せず、12個のLEDが全周で1個おきに(奇数番号と偶数番号が交互に)点滅して「どこかにいる」と伝えます。
大前提モードS/C機はあなたのFLARMを見ていません。さらに、無線機も積んでいない機体すら存在します。FLARMに映る相手は「空にいる機体の一部」にすぎない――この感覚を常に忘れないでください。

3|方向がわかる表示(FLARM/ADS-B)の3段階

LEDリングの光っている1個の時計方向に相手がいます。まずそちらへ目を向ける――これが基本の初動です。

情報(緑)距離・高度差がわかる注意(黄→橙)このままだと約20〜10秒警報(赤)衝突寸前・10秒未満
方向つき表示。相手のいる時計方向に1個だけ点灯し、色(緑→黄→橙→赤)で残り時間を示す。LCDには高度差(例:+0)も出る。
① 緑・方向つき ― 情報表示

相手の距離と高度差がわかる状態。まだ危険ではありません。

はじめの一手:光っている時計方向へ目を向け、高度差(+なら上・−なら下)を頭に入れて、そちら側を意識して監視します。

② 黄・橙・方向つき ― 注意表示

このまま飛ぶと、約20〜10秒後に接近という予測。

はじめの一手:相手を目視で確実にとらえ、高度差を確認しながら、衝突コースから離れる向きへ進路・高度を調整します。ただし避け方は次章の大原則(航空法の優先針路)にしたがってください。

③ 赤・方向つき ― 警報表示

衝突寸前(10秒未満)。連続ブザーと速い点滅で「待ったなし」を告げます。

はじめの一手:高度差を確認しつつ、衝突コースから離れる向きへ緊急回避。迷ったら「見て・避ける」を最優先に、大きくはっきりと動きます。

4|方向がわからない表示(モードS/モードC)の3段階

LEDリングが全周で1個おきに点滅するのがこの合図(奇数番号と偶数番号が交互に光ります)。方位は出ないので、「距離が近い」「高度が近い」を手がかりに、全周を目視で探すことになります。

情報(緑)同じ空域にいる注意(黄→橙)近い・方位は不明警報(赤)衝突寸前・方位不明
無指向性(モードS/C)。方位が不明なため、12個のLEDが全周で1個おきに(奇数番号と偶数番号が交互に)点滅する。LCDには自機を囲む輪と、高度差・概算距離だけが表示され、矢印(方位)は出ない。
① 緑・無指向性 ― 情報表示

同じ空域に、モードSだけを積んだ機体を見つけた状態。

はじめの一手:方位が出ないので目視による監視が必要。可能なら無線で呼びかけ、相手の位置・意図を確かめることも有効です。

② 黄・橙・無指向性 ― 注意表示

近くにモードS機。方位は不明のまま距離だけが詰まっています。

はじめの一手:まだ目視できていなければ要警戒。高度差を手がかりに全周を捜索し、高度をずらすのも有効な一手です。

③ 赤・無指向性 ― 警報表示

モードS機と衝突寸前。方位が出ないぶん、いっそう厳しい状況です。

はじめの一手:直ちに全周を目視で確認し、相手を捉える。捉えられないときも、高度をずらすなど空間を確保する動きを取ります。

5|6つの表示 早見表

表示相手・意味はじめの一手
緑・方向つきFLARM/ADS-B機。距離・高度差がわかるその時計方向へ目を向け、高度差を意識して監視
注意・方向つき約20〜10秒で接近の予測目視で捉え、コースから離れる向きへ調整(優先針路に従う)
警報・方向つき衝突寸前(10秒未満)高度差を見つつ、離れる向きへ緊急回避
緑・無指向性同空域にモードSのみ搭載機。方位なし目視で監視。無線での呼びかけも有効
注意・無指向性近くにモードS機。方位なし未目視なら要警戒。高度をずらすのも有効
警報・無指向性モードS機と衝突寸前。方位なし全周を目視確認、空間を確保する動き

6|忘れてはいけない、2つの大原則

① 目視と無線監視が、いつでも最優先

FLARMに映らない機体は、確実に存在します。FLARM未装備の機体、そして無線もFLARMも積んでいない機体。モードS/C機に至っては、あなたのFLARMを見ることができません。だから――計器がどう光っていても、「見張り(目視)」と「無線での状況把握」が空の安全の土台です。FLARMは、その土台を助ける道具にすぎません。

なぜ生まれたかFLARMは2004年、空中衝突の増加を受けて生まれました。研究と事故調査から、見張りだけでは接近機を間に合ううちに見つけきれないことがわかったからです(8.3節ほか)。FLARMは見張りの「置き換え」ではなく「補強」だ――発明の原点そのものが、それを物語っています。

② 避け方は、航空法の優先針路・回避方法が基本

FLARMは「危険がどちらにあるか」を指すだけで、「どちらへ避けよ」とは言いません(RAを出さない)。ですから実際の回避は、航空法にもとづく針路権(優先順位)と回避の作法――たとえば正面接近は互いに右へ、追い越しは右から、上昇・降下中の機との関係など――を基本に判断します。FLARMが示す方向と高度差は、その判断を早く・正確に下すための材料です。

まとめ色で残り時間を、光り方で方向のわかる/わからないを読む。そのうえで、目視・無線で確かめ、航空法にそって避ける。FLARMは最後の一手を教えてはくれません。だからこそ、鳴る前の準備が効くのです。

よくある質問

黄色(注意)が出たら、すぐに機体を動かすべきですか?
まずは光っている方向の相手を目視で確実にとらえることが先です。そのうえで、高度差を確認しながら衝突コースから離れる向きへ調整します。避ける向きは、航空法の優先針路(正面接近は互いに右へ、追い越しは右から など)にしたがって判断してください。FLARMは「どちらへ避けよ」とは指示しません。
LEDがリング状に何個も光るのは故障ですか?
いいえ。それはモードS/モードC機(トランスポンダのみ搭載)を捉えた合図です。これらの機体は自分の位置を放送しないため、Flexは概算の距離と高度しかわからず、方位が出せません。方向不明を「リング状の点灯」で伝えているので、全周を目視で捜索してください。
FLARMが鳴らなければ、まわりに機体はいないと考えてよいですか?
いいえ。FLARM未装備の機体、無線もFLARMも積んでいない機体は存在します。モードS/C機に至っては、こちらのFLARMを見ることができません。計器がどう光っていても、目視(見張り)と無線での状況把握が空の安全の土台です。
赤(警報)で相手が見つからないときは、どうすればよいですか?
直ちに全周を目視で確認しつつ、高度をずらすなど衝突コースから空間を確保する動きを取ります。特に無指向性(モードS/C)の警報は方位が出ないため、高度差を手がかりに素早く捜索し、見合いの原則にしたがって回避してください。