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Column ・ 2026.07.22

第9回 FLARMの情報を、どこで見るか ― PowerFLARM Flexの“つなぎ方”大全(純正PowerFLARM Vision・LXNAV・SeeYou・EFB)

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江副 浩 / ezoe.net ・ 2026年7月

前回(第8回)は、FLARMやADS-B、トランスポンダといった“見える化”の仕組みを横並びで整理しました。今回は視点を一気に手元に引き寄せて、「受け取った交通情報を、どの画面で見るか」という出口の話をします。

主役は、日本でも技適を取得して使えるPowerFLARM Flex。このデバイスは、ハイブリッド液晶ディスプレイ・アンテナ・電源(18650電池)をすべて内蔵したスタンドアロン機で、これ一台だけでもLEDリングと画面で警報を確認できます。第6回第7回でも触れたとおりです。

ただ、実際の運航では「もっと大きな画面で見たい」「複座機の後席にも表示したい」「いつも使っているグライドコンピュータやスマホのナビに重ねたい」というニーズが出てきます。Flexは、そうした外部ディスプレイやナビ機器への接続を、大きく分けて2つの経路で用意しています。

Flexには“2つの出口”がある
  • ① 有線 ― 背面のRJ45コネクタ:標準的なシリアル(RS-232)で交通情報を送り出す。純正ディスプレイや対応グライドコンピュータへ、確実・安定につなぐ道。
  • ② 無線 ― Wi-Fi / Bluetooth Low Energy(BLE):スマホ・タブレットのナビアプリ(EFB)や、Wi-Fi対応の計器へ、ケーブルなしで飛ばす道。

この2つを軸に、順番に見ていきましょう。

まずは純正の道 ― 2026年秋発売予定「PowerFLARM Vision」

いちばん素直な選択は、FLARM社純正の外部ディスプレイです。PowerFLARMデバイス向けに新しく設計された純正ディスプレイ「PowerFLARM Vision」が、2026年秋(Fall 2026)に発売予定とアナウンスされています(本稿執筆時点の予定であり、仕様・時期は変更される可能性があります)。パネルに固定して大きく見せたり、複座機で後席にも見せたりといった、常設運用にうってつけの相棒です。

接続は非常にシンプルで、公式には「使い慣れたRJ45ポートによるプラグ&プレイ。電源とデータの両方を1本で扱う」と説明されています。つまり、Flex背面のRJ45コネクタにケーブル1本さすだけで、給電と交通データのやり取りがまとめて完結する設計です。

常設で外部ディスプレイを使うなら“機体側電源”で なお、外部ディスプレイを常設で使う場合は、Flexを内蔵18650電池ではなく機体側の電源(USB-Cまたはパネルの12〜32V)で動かすのが自然です。というのも、後述のとおりRJ45経由でディスプレイへ供給できる電流には上限(最大250mA=3V時)があり、外部の画面を安定して駆動するには機体電源から余裕をもって給電するのが前提になるためです。常設設置なら、機体のマスタースイッチと連動させて給電する形が扱いやすいでしょう。

そして――ここが今回のいちばんおもしろいところなのですが――このRJ45コネクタは純正ディスプレイ専用の“特殊な口”ではありません。中身はごく標準的なシリアル通信です。だからこそ、純正のPowerFLARM Vision以外にも、さまざまな他社製の計器・ナビへつなぐ道が開けます。次はそのコネクタの“中身”を覗いてみましょう。

背面RJ45コネクタの“中身” ― ピンアサインを読む

Flexの背面には、電源にも通信にも使える8ピンのRJ45ソケット(8P8C)が1つあります。Flexマニュアル(FTD-114)には、その各ピンの役割が明記されています。8本のピンは、次のように割り当てられています。

RJ45(8P8C)ピンアサイン ― PowerFLARM Flex 背面 1GND 2GND 3RX 4TX 5GND 6+3V 7+12–32V 8+12–32V シリアル通信(RS-232):3=RX(受信)/4=TX(送信) GND(接地):1・2・5 ピン6:Flexからディスプレイへ +3V DC を供給(最大250mA) ピン7・8:+12〜+32V DC 電源入力(Flexへの給電)
PowerFLARM Flex 背面 RJ45(8P8C)のピンアサイン。出典:FTD-114 PowerFLARM Flex マニュアル §3.5.2.2。
ピン役割種別
1GND(接地)電源/信号のグラウンド
2GND(接地)電源/信号のグラウンド
3RX ― デバイス受信(RS-232)シリアル通信
4TX ― デバイス送信(RS-232)シリアル通信
5GND(接地)電源/信号のグラウンド
6Flexがディスプレイへ +3V DC を供給ディスプレイ給電(最大250mA)
7+12〜+32V DC 電源Flexへの給電
8+12〜+32V DC 電源Flexへの給電
配線ミスは“基板が焼ける”マニュアルには、はっきりこう書かれています ―― 「誤ったピンに電源を接続すると、回路基板が焼損し、デバイスが使用不能となり、保証が無効になります」。自作ケーブルで挑む場合は、電源(7・8番)とグラウンド(1・2・5番)、信号(3・4番)を絶対に取り違えないこと。とりわけ「一部のディスプレイの資料ではピン番号が左右逆で記載されている」という注意書きがあり、Flex側とディスプレイ側でピン番号の数え方が食い違う落とし穴があります。純正のストレートケーブルや、メーカー指定の専用ケーブルを使うのが安全です。
豆知識 ― IGC標準に“ほぼ”準拠この8P8Cソケットは、ピン6を除いてIGC GNSS FR(フライトレコーダー)仕様に準拠しています。つまりコネクタの配列自体が、滑空機の世界で広く使われている国際的な標準に沿っている、ということです。だからこそ他社製の計器ともつなぎやすいわけです。

“標準シリアル”だから、いろいろつながる

ピンアサインを見て気づくとおり、通信部分はごく普通のRS-232シリアル(3=受信・4=送信・グラウンド)です。ここを流れているのは、FLARMが定めたデータポート・プロトコル ―― 海事で使われるNMEA 0183を拡張した、公開仕様です(インターフェース仕様書 FTD-012 に全文が記載されています)。

具体的には、1秒ごとに次のような“文”(センテンス)が送られてきます。

  • $PFLAU … ハートビート(動作状態)と、いちばん危険な相手への基本警報。「何機見えているか」「警報レベルはいくつか」を伝える。
  • $PFLAA … 周辺の各機体の詳細データ(相対位置・高度差・進行方向・機体種別・IDなど)。

この仕様が公開されているからこそ、世界中の航空電子機器メーカーやPDA/スマホアプリの開発者が、こぞってFLARM対応の表示機能を実装してきました。Flexの背面コネクタは、いわば「規格が合えば誰とでも話せる共通の口」なのです。Flexが対応するシリアル系プロトコルは、FLARMデータポート/GDL 90/Garmin TISの3種類です(仕様§9.2)。

つなぐときの3つの技術メモ
  • 通信条件はRS-232の 8ビット・パリティなし・ストップ1ビット(8N1)、ハンドシェイクなし。
  • ボーレートは自動検出が推奨。接続機器側が起動時に必要な速度・プロトコルバージョンを設定する場合も多い。高いプロトコルバージョン/高いボーレートほど、同時に表示できる機体数が増える。
  • 飛行中に機器からFLARMへコマンドを送るのは避ける。ICDには「NMEAコマンドを受信するとFLARMが数秒間、無線通信と衝突警報を中断することがある」と明記されている。設定は地上で済ませておくのが鉄則。

もう一つの出口 ― Wi-Fi と Bluetooth LE

ケーブルを引き回さずに、スマホ・タブレットのナビアプリ(EFB=電子フライトバッグ)や、無線対応の計器へ交通情報を飛ばすのが無線の道です。Flexは電源を入れているあいだ、常に近くの端末から見つけられる状態になっています。

Flexが用意している無線の“しゃべり方”は4通りです(FLARM Hub EFBガイド FTD-115/Flexマニュアル§7)。

モード接続先・ポート特徴
FLARM ICD on Wi-Fi(TCP)IP 10.10.10.10 / ポート 2000双方向。FLARM独自情報もフル。同時1接続のみ
FLARM ICD on Wi-Fi(WebSocket)http://10.10.10.10/api/flarm/dataportブラウザ系。同時1接続のみ
GDL 90 on Wi-Fi(UDP)ポート 4000自動検出対応(ForeFlight等)。複数端末OK。ただしFLARM固有メッセージは含まれない
FLARM ICD on BLEBluetooth Low Energy(UUID FFE0/FFE1)FlexはiOS・Android両対応同時1接続のみ
FlexはBLE、iPhoneでもOK据置型のPowerFLARM Fusionが「Bluetooth Classic(Android専用)」なのに対し、Flexは Bluetooth Low Energy(BLE)を使い、iOS/Androidのどちらでも接続できます。スマホのSeeYou Navigatorや、タブレットのEFBアプリと相性がいいのはこのためです。Wi-Fiを使う場合は、まず端末をFlexのWi-Fiネットワーク(初期ホスト 10.10.10.10)につなぎます。SSID・パスワードはFlex本体のメニューで確認できます。
「同時に1つだけ」の落とし穴TCP・WebSocket・BLEはいずれも同時に接続できるのは1台まで。スマホをつないでいる間は、別の端末からは見えなくなります。複数の画面に同時に出したいなら、複数接続を許すGDL 90(UDP)を使うか、有線と無線を役割分担させる工夫が要ります。

どの機器につながる? ― 接続できそうな計器・ナビのリスト

ここからが実用編。Flexの背面シリアルや無線につなげられそうな、代表的な計器・ナビ・アプリを整理しました。滑空機の世界で使われている主要なグライドコンピュータやディスプレイの多くが、そもそもFLARM表示を前提に作られているため、選択肢は意外と広いのです。

重要なおことわり以下は、各メーカーの公開情報(対応プロトコル・接続方式)から「つながりそう」と判断したもので、筆者が実機で接続確認をしたものではありません。実際の接続可否・必要ケーブル・設定は、必ず各メーカーの最新資料でご確認ください。とくにRJ45のピン配線はメーカーによって流儀が違い、誤接続は機器の破損につながります。

(A)有線シリアルでつながりそう ― いちばん確実

背面RJ45のFLARMデータポート(NMEA 0183)で受けるタイプ。表示専用機やバリオが中心で、内蔵FLARMを持たないため競合の心配が少なく、もっとも堅実です。

メーカー製品接続備考確度
FLARM純正PowerFLARM Vision 2026秋予定RJ45Flex向けの新純正ディスプレイ。プラグ&プレイ確実
FLARM(LXNAV製)FlarmView57 / FlarmViewXRJ12+RJ45小型の定番表示機。FLARM/ADS-B表示確認
AIR AvionicsAIR Traffic Display(ATD-57 / ATD-80)RS-232 ×2FLARM+Garmin TIS対応。FLARM/IGC配線のRJ45ケーブル付属確認
AIR AvionicsButterfly DisplayRJ45FLARM/ADS-B表示確認
LXNAVS8 / S80 / S10 / S100GPS/FLARMポートバリオ+ナビ。FLARM接続時にトラフィック&音声警報を表示確認
ClearNav InstrumentsClearNav IIRS-232フライトコンピュータ。FLARM/NMEA表示確認
LX NavigationEra / EosFLARMポート(RJ12)RJ45→RJ12の変換配線が必要要確認
SiebertExternal Display V3+RJ12全FLARM/PowerFLARM対応、音声警報内蔵、6–18V要確認
XCSoar / LK8000Android・PC・PDA・Oudie等シリアル(USB/RS-232)オープンソース。FLARMドライバでレーダー表示確認
配線ミスに注意とくにLXNAVのバリオは、PDAポートとGPS/FLARMポートで配線が異なり、取り違えると破損した例が報告されています。必ずGPS/FLARMポート側へ、メーカー指定のケーブルで接続してください。

(B)Wi-Fi / Bluetooth でつながりそう ― 手軽さ重視

スマホ・タブレットのナビアプリ(EFB)が中心。多くはGDL 90(Wi-Fi UDP・複数接続可)か、FLARM NMEA(Wi-Fi TCP 2000/BLE・同時1接続)で受けます。FLARM固有の詳細情報まで欲しいなら、GDL 90よりFLARM NMEAが有利です。

メーカー/アプリ接続方式対応プロトコル確度
Naviter SeeYou Navigator(スマホ)Wi-Fi / Bluetooth LEFLARM/NMEA(BLE)確認
XCSoarWi-Fi(TCP 2000)/ BLEFLARMドライバ/GDL 90確認
SkyDemonBLE / Wi-FiFLARM/NMEA(BLE)/GDL 90確認
ForeFlightWi-Fi(自動検出)GDL 90(UDP 4000)確認
Air Navigation ProWi-Fi(TCP 2000)FLARM/NMEA確認
EasyVFR 4Wi-Fi(TCP 2000)FLARM/NMEA/GDL 90確認
Enroute Flight NavigationWi-Fi / BLEFLARM/NMEA/GDL 90確認
Airmate / Sky-Map / Helios HorizonWi-FiGDL 90 ほか確認

※(B)の設定値(IP・ポート・プロトコル)はFLARM社の「FLARM Hub EFB Guide(FTD-115)」に各アプリ別の推奨設定が載っています。

(C)内蔵FLARMがあり、外部Flex接続は“要注意”

これらはFLARM回路を内蔵できるタイプのフライトコンピュータです。すでに内蔵FLARMを積んでいる機体に外部のFlexを足すと、どちらのFLARMを使うかで動作が競合することがあります。接続する前に、必ずメーカーへ確認してください。

メーカー製品注意点確度
LXNAVLX9000 / LX8000(後継含む)内蔵PowerFLARMオプションあり。外部PowerFLARMも接続可だが排他になり得る。外部FLARMはLX経由では更新不可要確認
LX NavigationZeus背面に「LX Flarm Red Box」を内蔵可能。外部FLARMとは通常どちらか一方要確認
NaviterOudie N(FANET+版)Skytrax製 FANET+/FLARM送信モジュール内蔵。外部併用は要注意要確認
まとめると表示専用機・バリオ(=内蔵FLARMなし)なら有線接続がいちばん確実。スマホ・タブレットで手軽に見たいならWi-Fi/BLE。すでにFLARM内蔵のグライドコンピュータを使っているなら、外部Flexを足す前にコンフリクトの有無をメーカーに確認――これが基本方針です。

まとめ ― “出口”を選べば、FLARMはもっと活きる

PowerFLARM Flexは単体でも完結しますが、「どこで見るか」を選べるのが強みです。

  • 純正でかっちり → 2026年秋発売予定のPowerFLARM Visionを、RJ45プラグ&プレイで。常設ならFlexは機体側電源で運用
  • いつもの計器に重ねる → 背面RJ45の標準シリアル(NMEA 0183拡張)で。ピンの取り違えとコンフリクトに注意。
  • スマホ・タブレットで手軽にWi-Fi/BLEでEFBやSeeYou Navigatorへ。同時1接続の制約に注意。

大事なのは、FLARMが送っているのは公開された標準プロトコルだという事実。だから「純正しか選べない」のではなく、自分の機体・使い方に合った“出口”を選べるのです。次にFlexの背面を覗くときは、あの小さなRJ45コネクタが、じつは世界標準への“共通の口”だったと思い出してください。

参考にした情報

FLARM 公式サイト
https://www.flarm.com/
PowerFLARM Flex・PowerFLARM Vision の製品情報と一次資料。
FTD-114 PowerFLARM Flex マニュアル/FTD-012 Data Port ICD/FTD-115 FLARM Hub EFB Guide
https://www.flarm.com/en/support/downloads/
RJ45ピンアサイン(§3.5.2.2)、シリアルプロトコル、Wi-Fi/BLE接続の一次情報。本記事のピン配置・接続仕様はこれらに基づく。
PowerFLARM Vision(FLARM 公式)
https://www.flarm.com/en/general-aviation/powerflarm-vision/
2026年秋発売予定の純正ディスプレイ。RJ45プラグ&プレイで電源・データを扱う旨の記載。
AIR Traffic Display(ATD-57)/Butterfly Display ― AIR Avionics
https://www.air-avionics.com/traffic-avoidance/
RS-232でFLARM/Garmin TISに対応する表示専用機。FLARM/IGC配線のRJ45ケーブル付属。
LXNAV S100/S10 ほか(LXNAV Gliding)
https://gliding.lxnav.com/products/s100/
GPS/FLARMポートでFLARM・ADS-B・PCASのトラフィックと音声警報を表示。内蔵Bluetoothも搭載。

本記事は、FLARM社の公開資料(PowerFLARM Flex マニュアル FTD-114、Data Port ICD FTD-012、FLARM Hub EFB Guide FTD-115)および各機器メーカーの公開情報をもとに、グライダー運航者向けにやさしく整理した読み物です。「PowerFLARM Vision」の発売時期・仕様は本稿執筆時点の予定であり、変更される可能性があります。接続機器の一覧は公開仕様からの推定を含み、実機での接続確認を行ったものではありません。ピンアサインや電源接続を誤ると機器が損傷するおそれがあります。実際の搭載・配線・運用にあたっては、必ず各メーカーの最新の一次資料および国内の関係法令・所属団体の指針をご確認ください。 / 江副 浩・ezoe.net  |  滑空とテクノロジー Column #09  |  2026年7月

よくある質問

PowerFLARM Flexを外部ディスプレイにつなげますか?
はい。背面のRJ45から標準シリアル(FLARMデータポート/GDL 90/Garmin TIS)で、対応ディスプレイやグライドコンピュータへ出力できます。2026年秋発売予定の純正PowerFLARM VisionはRJ45プラグ&プレイで電源とデータを1本でまかないます。
スマホやタブレットのナビアプリで見られますか?
はい。Wi-Fi(GDL 90はUDPで複数端末可/FLARM ICD on Wi-FiはTCP 2000で1台)やBluetooth LEで、SeeYou Navigator・XCSoar・SkyDemon・ForeFlightなどに表示できます。FlexのBLEはiOS/Android両対応です。
複数の画面に同時に表示できますか?
TCP・WebSocket・BLEは同時1接続のみです。複数端末に同時に出したい場合は、複数接続に対応するGDL 90(Wi-Fi UDP)を使うか、有線と無線で役割分担します。
RJ45コネクタに電源を自作配線してもいいですか?
ピンを誤ると回路基板が焼損し、保証も無効になります。純正またはメーカー指定のケーブルを使ってください。資料によってピン番号が左右逆に記載される場合があるので特に注意が必要です。